「はんだやレイブ」記事@ハフポストについて


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さてさて、ハフィントンポスト日本語版の方に、ぼくが書いた記事が載りました。
「はんだやレイブ14秋」に90年代の音楽とネットとの関係を見る
記事では書き切れなかったお話(というか、だいぶ自分語りになりましたが)をちょっと補足しておきましょう。

今の自分の研究ではインタビュー調査を中心に置いてやっているんですが、これまで取ってきたログをネット上に置けないかなぁ?と今年の春ごろから考えていたんですね。ネットから取ってきた情報をネットにフィードバック、というのはもちろんあるし、自分のモチベーション維持にもつながるし。また、「○○さんに話を聞いたんでしょ?読みたいからファイルください!」みたいなことを言われたりもしました。
そこで、ここのウェブサイトみたいな自分制作のページに置こうかと画策していたんですが、それだとあまりにも人の目に付かないし、フィードバックとしての意義が微妙だなと。そんな時にハフポストの編集者と偶然会う機会があって、こんなこと考えてるんですよ~と言ったら、ハフポスト上でやらせてくれたというわけです。ありがとうございます。ハフポストの意図として、コメントの応酬で議論を惹起する、というのがあると思うので、自分の調査の射程を広げるためにそこのところに期待している、というのもあります。だからコメントよろしくお願いいたします!!あなたの街にもお伺いするかもしれませんよ!!

というわけでなので、基本的にはインタビュー調査からの抜粋をまとめたログ倉庫のようにしていくつもりです。一つのコラムに並べていくことで、インデックス的なものにできたらいいなと思っています。ただ、初回でいきなりログっぽくするのも面白くないし、ちょうど「はんだやレイブ」というナイスなイベントでインタビューをしたばかりだったので、今回はイベント紹介的に書いてみることにしました。今後もそういう時事ネタ記事も書きたいと思っています。

さて、いきなりですがここからは自分語りと今後の目論見です。
なぜ90年代の音楽とネットとの関係に注目するようになったのか、メモっておきます。

修士の時、ぼくは日本のネットレーベルの活動を対象にして、そうしたフリーな音楽流通というものが現在の音楽環境にとって何を意味しているのか?これまでと何が違ってきているのか?を考えようとしました。それまでの自分は、2005年ごろからずっとバンドをやってたこともあって、インターネットを利用したプロモーションには関心を持ってました。myspaceがちょうど流行った時期で、知り合いのバンドもインターネット経由でネットワークを作ったり宣伝をしたりしてましたね。相対性理論とかmyspaceで火が付いた感じありますもんね。そこでの関係で、ネット著作権みたいなものには関心を持つようになっていて、津田大介『誰が「音楽」を殺すのか?』を読んだり、ライブハウスのノルマが高くてバイトしてもバイトしても金欠だった理由を知りたくて、宮入恭平『ライブハウス文化論』を読んだり。

それから2008年ぐらいからTwitterで遊ぶようになって、初めてネットレーベルという存在に気づきました。それまではやっぱライブハウス厨だったんですよ。クラブは怖い兄ちゃんがいる場所という印象でした。バンドではクラブでの演奏もやってたんですけど、むしろ、そこで見てなおさら怖い、みたいな。あとやっぱCDは手売りのCD-Rでもいいから手元に欲しいし。ですが、ネットレーベルを知ってその活動のフリーさに驚いて、Maltine Recordsのイベントに行ってみて、「これは何かが面白い!」と思ったのが最初の最初です。そこから改めて当時の自分の周りのネット音楽環境を見回してみると、ニコ動やyoutubeで盛り上がっていた初音ミクも、Maltine(というかtomadくんかな?)がわりと依拠していたブレイクコア/同人音楽も、日本でも盛り上がり始めたネットレーベルも、全部何か似かよったグルーヴを持っていることに気づきました。インターネット、パソコン、ネットワーク、つながり、メディア…何だろう??ロッキンオン読んでた時と環境がだいぶ違う??何が違うのか知りたい!!という関心が、大学院に行った理由でしょうか。

だけど、記事にも書いてますが、現在の自分の関心は、上記の「ネット音楽環境の変容」とされるような状況につらなる歴史的経緯を明らかにすることです。どういうことか?

ネットレーベルのことを調べていく中で実は最も興味深かったのは、「Netlabel」という言葉が生まれ、使われるようになった過程のことでした。修士の研究では、日本のネットレーベル間のつながりや、内部での関係構築がどのように実現しているのかといった点、つまり現在進行形の部分に焦点したのですが、調査を進める中で気になっていったのは、現在よりも少し前の状況でした。
調べれば出てくることですが、「Netlabel」の出自は、80年代後半の北欧Demo Scene、そして90年代に入って特にPC Trackerが広がって以降の(基本的には英語圏での)MOD流通と現Internet Archiveなどのアーカイブサイトです。このあたりでのMODアーカイブサイト(monotonikが好例ですが)が、後に「Netlabel」と呼ばれるようになっていきます。こうした90年代半ば~後半に熟していったフリーなMOD流通は、実は日本語圏にはすぐには入ってきませんでした。言葉の違いはもちろんあるし、何よりネットワークが限定されていたこと、パソコンの機種間の差異が強かったことなど、いくつかの理由があります。
その時の日本ではむしろ、RolandやYAMAHAなどの電子楽器産業が主導し、DTM/MIDI文化が花開いていました。MIDI規格という楽器のための技術と、パソコンやネットワークといったニューメディアの技術が接続し、これまでにない「音楽メディア」が形成されつつあったわけです。ネットワーク上の著作権についてもまだはっきりとしたガイドラインが無かったこともあって、わりと自由に耳コピMIDIファイルが流通していました。
90年代末に近い時期、国産ニュー音楽メディアが隆盛しきった時代に、それらへのオルタナティブとしてMODは日本へと導入されたといえるでしょうか。オルタナティブというのは、ファイル構成の方法論的にもそうだし、お金をかけないでやれるという意味でもそうです。英語圏でのこれまでの蓄積に依拠しながら、同人音楽とも関係の深いナードコア・テクノや、日本版MODシーンで技術の流用がなされました。
しかし、実はこの時期は同時に、MP3の使用が拡大する時期でもありました。英語圏MODアーカイブサイトはちょうど2000年頃を境にしてMP3のアーカイブにシフトしていき、「Netlabel」という名称が使われるようになるのも同時期です。日本では、MIDI文化は97年以降の著作権法改正を受けた取り締まりの影響もあって(もちろんそれだけではないですよ!)縮小し、生まれたばかりのMODシーンも盛り下がってしまいます。そして日本でネットレーベルを名乗るウェブサイトが登場するのは2004年、彼らはみなMP3での配信を行なっています。MP3に代表される圧縮されたサウンドファイルがDRMの実装を乗り越えて使用されるようになると、現在で言う意味での音楽配信がスタートし、これまでのデータ資産を活用したレコード産業がぶいぶい言わせるようになっています。ネットレーベルは、それへのオルタナティブ、あるいは青田刈り?として楽しまれているように見えます。

このざっくりとしたネットレーベルの周りの歴史的展開を見て、ぼくの関心はネット音楽の歴史研究に向きました。この領域で行なわれてきたのは、現在の「音楽メディア」像を賭けた、技術を用いての覇権争いに他なりません。現在の感覚からすると奇形とも呼べるような、少し不思議な音楽流通や楽しみ方の姿が連打されてきたのです。そしてそれらは、枝として切り落とされてしまったわけではなく、たとえば現在のネットレーベル文化につながっているように、現在進行形で影響を与え続けているわけです。この領域を明らかにすることは、「音楽メディア」の姿についての考察に寄与することでもあるし、普段の自分の音楽生活を考え直すことにもつながると思いました。つまり、音楽の姿を限定して考えすぎていたかも、と。

こうして90年代のネットと音楽との関係を見てみると、ネットレーベルに近接した文化領域にも目が向きます。1つはゲーム音楽、もう1つは同人音楽です。両者とも近年になってまとまった考察がされるようになってきていますね。RBMAのdiggin’ in the cartsとかもうすごいですしね。そして両者とも、90年代のパソコンの技術、ネットワークの技術と、それを使用・流用して遊ぶ、という点で、ネットレーベルやDTM文化と共有する基盤がめちゃくちゃあるわけです。Karen Collins “From Pac-Man to Pop Music” なんかは、そうした着目を早い段階でまとめたプロジェクトだと言えるでしょう。同人音楽も同様の観点から見ていくと、新たなジャンル?音楽文化?というだけではない意義を見いだすことができるように思います
ちなみに、上のdiggin’~でも監修をつとめている元VORCのhally氏なんかは、ここでぼくが言っているようなことを実践的な形で明らかにし続けてきています。超かっこいいですね!最近はCHIP UNIONという8bitカルチャーフォーカスなニュースサイトをやっているようです。
【特集】Hally × YMCK × ヒゲドライバー「CHIP UNION」立ち上げ記念対談

ぼくが以前に感じた、初音ミクや同人音楽やネットレーベルに何か共通するグルーヴがある、というのを、ここで言っている技術使用の共通性から言葉にできるのではないか、そう考えています。ジャンルで区切って考察することももちろん重要ですが、それらを横断する視点からの考察は、補足的に意義を持つでしょう。
まだうまく語ることができませんが……。
ハフポストのブログ記事は、こうした関心によって運営されています。そして、同様の関心を持って見たり考えたりている人がたくさんいる。その人たちに話を聞きたい、と思っているわけです。