「はんだやレイブ」記事@ハフポストについて
さてさて、ハフィントンポスト日本語版の方に、ぼくが書いた記事が載りました。 今の自分の研究ではインタビュー調査を中心に置いてやっているんですが、これまで取ってきたログをネット上に置けないかなぁ?と今年の春ごろから考えていたんですね。ネットから取ってきた情報をネットにフィードバック、というのはもちろんあるし、自分のモチベーション維持にもつながるし。また、「○○さんに話を聞いたんでしょ?読みたいからファイルください!」みたいなことを言われたりもしました。 というわけでなので、基本的にはインタビュー調査からの抜粋をまとめたログ倉庫のようにしていくつもりです。一つのコラムに並べていくことで、インデックス的なものにできたらいいなと思っています。ただ、初回でいきなりログっぽくするのも面白くないし、ちょうど「はんだやレイブ」というナイスなイベントでインタビューをしたばかりだったので、今回はイベント紹介的に書いてみることにしました。今後もそういう時事ネタ記事も書きたいと思っています。 さて、いきなりですがここからは自分語りと今後の目論見です。 修士の時、ぼくは日本のネットレーベルの活動を対象にして、そうしたフリーな音楽流通というものが現在の音楽環境にとって何を意味しているのか?これまでと何が違ってきているのか?を考えようとしました。それまでの自分は、2005年ごろからずっとバンドをやってたこともあって、インターネットを利用したプロモーションには関心を持ってました。myspaceがちょうど流行った時期で、知り合いのバンドもインターネット経由でネットワークを作ったり宣伝をしたりしてましたね。相対性理論とかmyspaceで火が付いた感じありますもんね。そこでの関係で、ネット著作権みたいなものには関心を持つようになっていて、津田大介『誰が「音楽」を殺すのか?』を読んだり、ライブハウスのノルマが高くてバイトしてもバイトしても金欠だった理由を知りたくて、宮入恭平『ライブハウス文化論』を読んだり。 それから2008年ぐらいからTwitterで遊ぶようになって、初めてネットレーベルという存在に気づきました。それまではやっぱライブハウス厨だったんですよ。クラブは怖い兄ちゃんがいる場所という印象でした。バンドではクラブでの演奏もやってたんですけど、むしろ、そこで見てなおさら怖い、みたいな。あとやっぱCDは手売りのCD-Rでもいいから手元に欲しいし。ですが、ネットレーベルを知ってその活動のフリーさに驚いて、Maltine Recordsのイベントに行ってみて、「これは何かが面白い!」と思ったのが最初の最初です。そこから改めて当時の自分の周りのネット音楽環境を見回してみると、ニコ動やyoutubeで盛り上がっていた初音ミクも、Maltine(というかtomadくんかな?)がわりと依拠していたブレイクコア/同人音楽も、日本でも盛り上がり始めたネットレーベルも、全部何か似かよったグルーヴを持っていることに気づきました。インターネット、パソコン、ネットワーク、つながり、メディア…何だろう??ロッキンオン読んでた時と環境がだいぶ違う??何が違うのか知りたい!!という関心が、大学院に行った理由でしょうか。 だけど、記事にも書いてますが、現在の自分の関心は、上記の「ネット音楽環境の変容」とされるような状況につらなる歴史的経緯を明らかにすることです。どういうことか? ネットレーベルのことを調べていく中で実は最も興味深かったのは、「Netlabel」という言葉が生まれ、使われるようになった過程のことでした。修士の研究では、日本のネットレーベル間のつながりや、内部での関係構築がどのように実現しているのかといった点、つまり現在進行形の部分に焦点したのですが、調査を進める中で気になっていったのは、現在よりも少し前の状況でした。 このざっくりとしたネットレーベルの周りの歴史的展開を見て、ぼくの関心はネット音楽の歴史研究に向きました。この領域で行なわれてきたのは、現在の「音楽メディア」像を賭けた、技術を用いての覇権争いに他なりません。現在の感覚からすると奇形とも呼べるような、少し不思議な音楽流通や楽しみ方の姿が連打されてきたのです。そしてそれらは、枝として切り落とされてしまったわけではなく、たとえば現在のネットレーベル文化につながっているように、現在進行形で影響を与え続けているわけです。この領域を明らかにすることは、「音楽メディア」の姿についての考察に寄与することでもあるし、普段の自分の音楽生活を考え直すことにもつながると思いました。つまり、音楽の姿を限定して考えすぎていたかも、と。 こうして90年代のネットと音楽との関係を見てみると、ネットレーベルに近接した文化領域にも目が向きます。1つはゲーム音楽、もう1つは同人音楽です。両者とも近年になってまとまった考察がされるようになってきていますね。RBMAのdiggin’ in the cartsとかもうすごいですしね。そして両者とも、90年代のパソコンの技術、ネットワークの技術と、それを使用・流用して遊ぶ、という点で、ネットレーベルやDTM文化と共有する基盤がめちゃくちゃあるわけです。Karen Collins “From Pac-Man to Pop Music” なんかは、そうした着目を早い段階でまとめたプロジェクトだと言えるでしょう。同人音楽も同様の観点から見ていくと、新たなジャンル?音楽文化?というだけではない意義を見いだすことができるように思います ぼくが以前に感じた、初音ミクや同人音楽やネットレーベルに何か共通するグルーヴがある、というのを、ここで言っている技術使用の共通性から言葉にできるのではないか、そう考えています。ジャンルで区切って考察することももちろん重要ですが、それらを横断する視点からの考察は、補足的に意義を持つでしょう。
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